都会との決別~田舎暮らし

Life Style
私は都会での生活を諦めて田舎に戻ることになりました。これはそんな人物のストーリー。

私はとある企業で働く50代の会社員、何不自由なく都会での生活と仕事を満喫している、筈だった。 ある日突然、鬱になるまでは…。

仕事で都会へ転勤になりマンションで一人暮らし。通勤は徒歩圏内、日常生活でも不便はなく、どこへ行くにも徒歩か電車で自由に動ける。バスやタクシーも頻繁に通っているため、移動するには大して時間など気にせず、いつでもどこへでも気軽に行けるのが何より快適であった。

仕事終わりには近くの居酒屋に寄ったり、夜中でも徒歩2分もあればコンビニやスーパーがある。まさに衣・食・住は理想的といって良いほどだ。家賃はそれなりの金額だが、それほど高額な物件でもなく、家賃や生活費を入れても給料で十分支払っていける程度だ。

仕事もわりと気に入っていて、月に2、3回は遠方への出張もあるので、仕事と言えども半分は観光気分で国内を飛び回っていた。仕事仲間とも良好な関係で面白おかしく毎日を過ごしていた。私の性格はと言えば、あまりクヨクヨしたり悩んだりといったこととは無縁で、やる事を全力でやってあとはお気楽に過ごしたいという、世間では能天気というのだろうか。


そんな私が何故「鬱」になったか明確な原因は分からないが、多分「コロナ禍」であろうと思う。突然降りかかるパンデミックに、我が社もご多分に漏れず在宅勤務・出張禁止となり、日常生活でも飲食店は営業自粛や短縮、全ての日常が失われた。

お陰で普段の仕事量も増え、在宅勤務になったが故に付帯業務も山ほど増えた。結果、早朝から夜明け前まで仕事をしても追いつかないほどとなった。やがて自分の内で静かに何かが壊れ始めていたのだろう。しかし、体調の異変に気付くには半年程の期間が過ぎていた。目眩や幻聴、不眠に襲われる日々が続いた。

やがて私はクリニックで診察を受け「鬱」と診断され、療養のため長期休暇を取ることになった。部屋に引き籠り、外出も億劫になり出掛けることもしなくなった。酷いときは1週間も2週間も、部屋を出ることはなかった。

たまの外出といえばクリニックに行くときくらいで、有難いことに部屋から一歩も出なくてもウーバーイーツやネットスーパーの力を借りて生活には不自由しない。必要なものは全て部屋に居ながらにして手に入るのだ。これが益々引き籠りを加速させることになった。


やがて2年もの月日が流れ、会社を退職し無職となった。それに伴い収入も途絶えるが、しばらくは何とか生活を続けられるが、そんな生活もそう長くは続けていられないだろう。やがて貯金も使い果たし、何らかの方法で収入を得なければ生きていけなくなる。

やがて就職先を探して悪戦苦闘するが、一向に就職できない。「働く気はあるのに…」どこにも雇ってもらえない。アルバイトすら就職先が見つからず、無情に時間は過ぎ去り、貯金残高は減っていく。

ついに決断の時が目前に…。家賃を支払える限界を迎えようとしているのだ。選択肢は2つ。

  • 就職先を見つけ、このまま都会での生活を続ける。
  • 田舎に戻り細々と生活基盤を築く。

もちろん私の希望は都会生活である。何故なら老後においても生活に全く不便を感じないからだ。しかし就職口がない以上、続けられる筈もない。田舎に戻れば最低限住居はあるが、いろいろ不自由な面が出てくるのは目に見えている。


ここで少しシミュレーションしてみよう。「40代一般の男性が都会で借家暮らしの生活費」

🔹【固定費】
① 家賃:
7〜12万円(ワンルーム〜1LDK、エリアによる)
② 光熱費(水道・電気・ガス):
約1〜2万円(季節により変動)
③ 通信費(スマホ・Wi-Fi):
約5,000〜1万5,000円

🔹【変動費】
④ 食費:
約3〜5万円(自炊多めなら3万円前後、外食多めで5万円超も)
⑤ 日用品・雑費:
約5,000〜1万円
⑥ 交通費:
約5,000円〜2万円(通勤や外出頻度による)

🔹【その他】
⑦ 医療費・保険料:
約5,000〜1万5,000円(国保+民間保険等)
⑧ 娯楽・交際費:
約1〜3万円(お酒・趣味・飲み会など)
⑨ 貯金・予備費:
月に1〜3万円程度を想定

✅ 合計目安:
節約型:約18〜22万円
標準型:約23〜27万円
ゆとり型:約28〜33万円

⑧⑨を除いたとしても、一般的には約20万円というところだろう。では田舎での生活を想定した場合はどうであろうか。では、田舎で仮に家賃は0円で中古車の軽自動車を所有するイメージだとどうだろうか?

🔹【車購入費】中古の軽自動車を想定
約100万円 月額約1万7千円×60回払い
※5年ローン(単純計算で100万円を60回で割った場合)

🔹【固定費】
① 光熱費(水道・電気・ガス)
約1万〜1万5,000円
(冬場の暖房や地域によって上下あり)
② 通信費(スマホ・Wi-Fi)
約5,000〜1万円

🔹【車関連費用】(月割り換算)※軽自動車で走行距離1万km/月を想定
③ ガソリン代
約1万〜1万5,000円(通勤・買い物距離により増減)
④ 自動車保険・税金・車検・メンテ費用
月あたり約1万5,000円~2万円

🔹【変動費】
⑤ 食費
約2.5万〜4万円(自炊メインでかなり抑えられる)
⑥ 日用品・雑費
約5,000〜1万円
⑦ 交通費(その他)
基本は車移動が中心なので0円に近い

🔹【その他】
⑧ 医療費・保険料(国保+民間)
約5,000〜1万5,000円
⑨ 娯楽・交際費
約5,000〜1万5,000円(人付き合いや趣味による)
⑩ 貯金・予備費
月に1〜2万円程度は確保しておきたい

✅ 合計目安(月額)
節約型:約12万〜15万円
標準型:約15万〜18万円
ゆとり型:約18万〜21万円

同じく⑧⑨を除いたとして14万円くらいが一般的に考えられる妥当なラインだろう。しかし、田舎の現実はそれほど甘くはないのだ。よく「田舎は物価が安い」と聞くが、これが大きな間違いで都会のほうが安いものが大量にある店や品物の量も桁違いなのだ。おまけに買い物するにも病院に行くにも、何をするにしても車無しでは生活できない地域。これがどれほど不便で苦痛であるかお解りいただけるだろうか?高齢者になれば尚更のことである。

当然田舎のほうが賃金も安い、企業も少なく職業の選択肢も減る。人付き合いに不都合を感じない人には解らないであろうが、そうでない人間にとって田舎の「お付き合い」ほど邪魔なものはないと私は考えている。仕事や友人との付き合いは自分で調整できるが、「田舎のしがらみ」は大変面倒だと思っておいたほうが良いでしょう。

さらに現在でも田舎の電波事情は良くない、5G?5人の爺さんか? コンビニ?あぁ車で5分くらいで行けるよ。(わざわざ車を持ち出さないといけない) 全てのインフラにおいても満足できるようなものでもない。


話を元に戻そう、田舎のほうが生活にかかる費用は安く済むが、先にも言ったように就職の選択肢も狭まるので、就職さえも困難になる。しかし現実問題として家賃が支払えなくなるので、住居の心配がない田舎に戻らざるを得ないのである。

こうして私は止む無く、田舎に戻らざるを得ないこととなってしまった。田舎に戻って数か月経った今も就職先は見つからない。都会の頃から合わせて、もう何十社も断り続けられている。これから先、明るい未来は手に入れられるのだろうか…。